10/16/2016

ニュースの拾い読みー Death with Dignity -人生の逝き方ーBrittany Maynardさんの 軌跡 とHow to Die in Oregon

ここ数年、
人生のステージが変わってきたとつくづく思います。
周囲の友人、知人の訃報が多いです。
若かったころは、まず、周囲には結婚の話、写真、便り。
そして間もなくすると、年賀状は幼い子供の写真が主流。
人生が未来に向かっている、次期なのだなと
とくにこの頃は、誰々がホスピスケアに切り替えたという話を
毎月のように必ず聞きます。

ここ、ミシガンでは、もう手の打ちようがないという判断をされ、余命半年以内と診断されると、
このように、ホスピスケアに切り替える人が多いです。
ホスピスケアは、少しでも長く生き続けるという目的から、
少しでも、死ぬまでの痛みや苦しみを和らげ、最期の時を迎えるーーという目的にシフトしたもので、
専用の施設に入る人もありますが、私の周りでは、自宅でケアを受ける人の方が多いです。

今年は、絵の仲間のご主人がホスピスケアに入ったあと、まもなく亡くなりました。
ここ10年ほど、がん治療を続けていたのですが、
いよいよ状態が末期と診断され、ホスピスケアに切り替えたのです。

「彼はね、とてもとても良い患者でいたけど、最期は、やはり、とても凄まじいものだったわ。
最期に息を引き取ったとき、ああ、これで苦しみからやっと解放されたのね、辛かったのも終わったわねとーー」

彼女は、100歳のお母さんもご主人と同時にホスピスケアに入り、
2人を同時進行で面倒みていました。
そして、数日前、いよいよお母さんの方も亡くなりました。
かれこれ一年あまりの、苦しい旅でした。

さて、「ニュースの拾い読み」の投稿の下書きを書き、
はやくパブリッシュしなくちゃと思いつつ、
はっと気づいたらまるまる2年放っておいてしまったものに、「尊厳死」の話題があります。
書いたときはニュースは世間に出回っている真っ最中でしたが、
もう数年前のことになっちゃってる。。。

前置きが長くなりましたが、今さらながら、よっこいしょと投稿します。
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Terminally Ill Woman Brittany Maynard Has Ended Her Own Life

数年前のニュースですが、ブリタニーさんという若く、美しい女性が、
治療不可能な悪性の脳腫瘍にかかり、
自らの命を閉じる尊厳死を選択したことが、全米で大きく取り上げられました。
彼女の病気は、進行すると、大変な痛みや苦しみはもちろんですが、
自分が自分でなくなる状態になる段階がやってきます。
そのような状態になる前に、死を迎えたい。自分が自分らしいままの時に家族や友人と別れたい。

住んでいた州では違法であったため、合法であるオレゴン州のポートランドに引っ越しました。
(後で紹介するドキュメンタリーで紹介。オレゴン州はdeath of degnity の先駆的な州です)

なぜ、ブリタニーさんが、おおいに話題になったのかというと、
積極的にビデオ撮影のメッセージなどを発信し、
Death with dignity について理解を求めたからです。
そして、何よりも彼女の20代後半という若さと美しさ。
自ら逝ったときは29歳でした。

ちなみに、日本でいう尊厳死は、延命治療を続けないで、そのまま逝かせる事に使われている気がします。
ここでアメリカが言う尊厳死とは、本人に自覚、自覚ががある間、症状が末期のひどい状態になる前に安楽死をすることです。
アメリカ生活が長い我が家は、Living Will というものを作っていますが、
そこに、自分で判断ができない状態になった時に、延命治療をどうするかという事も意志を書いてあります。
死後の臓器提供などについても。
資産の事はもちろんですが、人生最期の事態についてもきちんと意志を表明しておく社会です。
延命措置で生き延びている状態をやめて亡くなるのは、アメリカでは自然死という認識のカテゴリーに入ります。
ですから、ブリタニーさんのようなDeath with Dignity による死は、安楽死といった方が分かりやすいです。

この記事の中にかなり沢山ブリタニーさんの軌跡が紹介されています。(英語)



病気になる前のブリタニーさんは、とても綺麗で、生き生きとした女性でした。
下は、結婚式での写真です。
アメリカでは、結婚式の写真をプロが本格的に撮ってまとめる事が盛んです。
人生の絶好調の時。



ブリタニーさんのニュースが話題になっていた頃、
俳優のロビン・ウイリアムズの自殺のニュースも世界中を駆け巡りました。
うつ病で苦しんでいたコメディ俳優の苦しい生活には想像を絶するものがあります。


抗がん治療の多くは、多量の投薬のため、その副作用で異常に太ることが多いです。
上は、ブリタニ―さんの最期に近いころ。まるで赤の他人のように見えるくらい太っています。
あとで紹介する「積極的な死」を選択した女性の言葉の中に、
「この尊厳死を選べば、**パウンド(という異常な体重増加で)膨れ上がることもない」
といったせりふがあります。
個人的に、薬の副作用での体重増加は、同じ経験をしていますから、気持ちがよくわかります。
どう努力しても、膨らんでしまい、とても嫌なものです。生き延びるためとわかっていても。。。


ブリタニーさんのために作られたページ

ブリタニーさんの遺志をサポートする基金のビデオ




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ブリタニ―さんは、Death with Dignityが合法なオレゴン州に引っ越しましたが、
このオレゴン州は、知る人ぞ知る、Death with Dignityの先駆けといえる有名な州です。
Death with Dignityについて理解を求めるため、
ブリタニ―さんは自らのことを世間に積極的に公開し、ビデオも作成して一般に公開するなどしていましたが、
彼女のこの活動は、じつは、このオレゴン州で始まった運動の流れにつながっています。

「How to Die in Oregon」
2011年にサンダースフィルムフェスティバルで、賞をもらったドキュメンタリー。
オレゴン州は、Death with Dignity が合法な州として知られています。
現在では、ワシントン州、バーモント州、、、と続き、
このドキュメンタリー作成中、
カリフォルニア州も合法化が進行中でしたが、現在は施行されています。

このドキュメンタリーを見ると、death with dignity のディテールがよくわかります。
医師は、必ず患者に「気が変わったか」を確認します。
映画は最後の最後の段階を紹介していますが、そこに行き着くまでには、
意思の確認作業が何度も行われています。

「家族に多大な金銭的、精神的負担をかけたくない」
という人には、自分が苦労をした経験、苦労を目の当たりにした経験があります。

「痛みや苦しみで、自分が自分でなくなっていくことに耐えられない」
「自分をコントロールできない状態は本当の自分の人生とは思えない」
「治療の副作用で、異常にふくれ上がった体になど戻りたくない」

この作品の中では、決断した患者さんたちの最期のシーンを淡々と紹介していますが、
一人、胃がんの女性の最期の日までを丁寧に、じっくりと追いかけています。
簡単な決断ではないことがひしひしと伝わってきます。

最期の時は、皆、自宅でそばにいてほしい人に囲まれて迎えています。

カチャカチャカチャーーーと、スプーンをかき回して、
カップの中の飲み物に「死への旅のための薬」を溶かし込む音が印象的です。
下はオフィシャルトレイラー。





クリスチャンが多いアメリカでは、
自ら死を選ぶという選択をすることにとても抵抗があると思います。
当人や家族だけでなく、社会(一般の人々)からの抵抗が強いと推察します。
ですから、このように、悩み、考えに考えた末の決断という事、
なぜか、という事の説明を丁寧にアピールするのでしょう。

でも、そのような中、
しっかりと尊厳死(安楽死)の合法を勝ち取った州がある所がすごいなあと思います。

http://www.fsight.jp/30098

参考
(下は2016年現在のアメリカでの条件Eligibility
日本語の方は、私が我流で訳したもので、正式な法律用語に訳されたものからの引用ではありません。念のため。
To qualify for a prescription under physician-assisted dying laws, you must beーーー
  • a resident of California, Oregon, Vermont, or Washington; and    ーカリフォルニア州、オレゴン州、バーモント州、ワシントン州、、、といったdeath of dignity が合法となっている州の(合法的な)住人であること。
  • 18 years of age or older; and   ー18歳以上
  • mentally competent, i.e. capable of making and communicating your health care decisions; and  ー精神状況が正常で、自分の病状、受ける医療措置を理解し、(安楽死を選択する決断をする)意思を他者に伝えることができること。
  • diagnosed with a terminal illness that will, within reasonable medical judgment, lead to death within six months. ー治療が不可能な疾患で、余命半年以内と医療機関から正式に診断されていること。
You must also must be able to self-administer and ingest the prescribed medication. All of these requirements must be met without exception.
ーー処方された薬は、誰の手も借りず、自分自身の手で摂取しなくてはいけません。
You will not qualify under aid-in-dying laws solely because of age or disability. ーー年齢や障害といった理由だけでは認められません。
Two physicians must determine whether all these criteria have been met.  ー2人の医師が、すべての条件を満たしていることを証明しなくてはいけません。
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このような記事をつらつらと拾い読みしていくうち、
ちょうどブリタニ―さんのニュースと同時期にあった
ロビン・ウイリアムズの自殺の件が妙に頭に浮かび上がってきました。
うつ病(Depression) は、体は元気でも、心が生きる意欲を失っている状態です。
心が「生きたくない」という気持ちに巣くわれて苦しんでいる場合はどうなのだろう?
それだって、想像を絶する苦しみといえるのではないか?

調べてみたところ、やはりありました。

ベルギーで「生きるのに向いていないから」ということで、
肉体的には健康な女性が安楽死することを認められたというニュースを見つけました。
http://tocana.jp/2015/06/post_6713_entry.html

でも、精神疾患で苦しむ人たちの死(というのか、死にどきの見きわめは難しく、
論議が絶え間なく続いているようです。
https://www.lifesitenews.com/news/study-lays-out-complications-of-death-with-dignity-in-belgium

death of dignity を認めている国、アメリカの州
http://www.dignitas.ch/index.php?option=com_content&view=article&id=54&lang=en


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ブリタニーさんのことが話題になっていたころ、フランスのある女性が
「合法的に安楽死したい」と国を相手に闘っていました。

フランスの52歳の女性が非常にめずらしい病気にかかり、
顔が異常に変形したうえ、目も見えなくなり、一日中続く痛みと戦っていました。
この患者さんは、Chantal Sébireさんといい、元学校の先生でした。
そして、病巣が脳をおかし始めたら植物状態になり家族が介護せねばならなくなります。
彼女は、政府に安楽死を許可してほしいという訴えを起こしていました。
しかし、政府は首をたてに振りませんでした。
そして、ある夜、彼女が亡くなっているのが発見されました。

司法解剖によると、彼女は自然死ではなく、フランス国内では手に入らない
医師介助による安楽死のために使われる薬による死だという結果でした。

アメリカと違い、医師の立ち会いなどといった細かい決まりがない国もあります。
ですから、「安楽死」の薬を手に入れるための極秘ツアーといったようなルートで手に入れたのではないか、
誰かが薬の入手に手を貸したのではないか、などと言われています。

この女性の例は、いささか皮肉なところもあります。
病気がわかったころ、頑として薬品の使用を「体にケミカルを入れたくない」と拒否し、
病状がひどく悪化したそうです。
最終的にはには、自分の命を奪うための薬(ケミカル)を欲しています。



http://content.time.com/time/world/article/0,8599,1724062,00.html


安楽死についてまとめられたもの(日本語)
http://matome.naver.jp/odai/2134910945569325401

生まれてきたら、いつかは必ず死ぬときがやって来ます。
死はどうしても避けられない現実です。
もし、あと半年と言われたら、自分はどのような選択をしたらいいだろう。。。
これから猛烈な苦しみ、痛みが待っていて、
さらにあるところからは自分が自分でなくなり、
周囲のことも全くわからなくなり、
周囲にも金銭的にも、精神的にも負担をかける、、、

個人的なことですが、8年ほど前、死を考える機会がありました。
患者としていろいろな処置をくぐり抜けたのですが、苦しいものが多々ありました。
子供たちもまだ小さく、アメリカに頼れる身寄りのないことの辛さを思い知りました。

医療処置は、10人ほどがグループになって、
同じサイクルを回る感じで進められていました。
「治療」という言葉は使いません。
より長く生き延びるための「処置」というのが正確だからです。

「同期の桜」ではないですが、仲間意識みたいなものも芽生えました。
苦痛が伴うことを経験していく中、つくづく思い、語り合ったのは、

I am not afraid of dying, but suffer.
死ぬのは怖くない。苦しみが、苦痛が耐えられない。
ーーということです。
毎日の生活が病院と共にある、不快感、痛み、苦痛と一緒に過ごす患者としての日々は、
前向きに考えようとしてはいても、みじめだなあと涙がポロリと出てしまうこともありました。

"I want to have my life back to normal."
早く普通の生活に戻りたい。

という気持ちでいっぱいでした。

また、大病を患うというのは大きな挫折感を味わうことも実感しました。
どんなに健康に気をつけていたとしても、かかる場合はあるのです。

処置のファイナルステージでは、体力が持たず、亡くなった仲間が何人かいます。
でも、私たちは生き延びるチャンスがあったので、まっしぐらに立ち向かっていました。

もし、もう絶望的で、見込みがない。
あと半年以内と判断された時、

そこに、合法的な「安楽死」の選択肢があった場合、
How to Die in Oregon の女性をはじめとした他の人々のように、
ブリタニーさんのように、
合法的な「安楽死」を選ぶかもしれないな。。。

死は、病気ばかりではなく、いろいろな形で訪れます。
事故、犯罪や災害の被害者エトセトラ。

考えるとこわくなってきた。
このへんでおしまいにしておきます。

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