9/20/2012

お気に入りの本 ー Into the Wild (邦題:荒野へ)




 

ある日の真夜中近く、
突然ドアのベルが高らかになり、
ドアが激しく叩かれました。
心臓が飛び出るほど怖かった!

ところが、
夜更かしして遊んでいた息子が、
駆け寄って、ぱっとドアを開けてしまいました。

強盗か何かだったらどうするの!!

外には、強盗ではなく、
ずぶぬれで息せききった、小柄な白人の青年が立っていました。
多分、高校生か卒業して間もないくらいの大学生くらいです。

友達のパーティに来ていたのですが、
何かの用で外に出たら、戻り方がわからなくなったとのこと。

そういえば、やっていました、近所の家でパーティーを。
音楽やらざわめきやら、ガンガン聞こえていました。
その家は、今はしんと静かで暗いです。
まさに「宴の後」状態。

その家は、我が家と1本隣の道沿いにある家で、
行き方としては、じつに単純なものでした。
でも、真っ暗闇の中、迷いに迷った彼には、わからなくなってしまったのです。
しかも、雨がザーザーと降ってきていました。

近所は家々の敷地がみな広く、街頭もなく、夜中は漆黒の闇。
その青年は、さんざん迷い歩いたあげくのようで、
身体中がガタガタ震え、顔は蒼白になっていました。
携帯電話を持って出なかったのが敗因だったようです。

我が家は夜更かしなので、明かりがついていました。
疲れ切った彼は、それを頼って我が家に来たのでしょう。

普通、夜中に人の家のドアなどたたきません。
先のように強盗と間違えられる危険もあり、
叩く方とて、とても怖いものです。
護身用の銃を持っている家庭もある国ですから。

今の生活は、自然を身近に感じる事が多いです。
だから怖さも身近にわかるようになりました。
そして、近くに人がいることのありがたさも。

ちょっとした間違いで、
遭難してしまう可能性があるのです。






さて、前置きが長くなりましたが、

上は、去年、読んで印象に残った本の1冊。

”Into the Wild"

ノンフィクションです。

"Into Thin Air"という登山もののベスト・セラーを書いた作家
 Jon Krakauer (ジョン・クラカワー)が、
ある1人の若者の「魂の軌跡」といっていいような、
人生の最後の1年間を、ていねいに追いかけています。

1991年、大学の卒業式直後、
クリス・マッケンダラス (Christopher Johnson McCandless)
という裕福な家庭で育った、優秀な青年が、
ふらりと蒸発してしまいます。
自分の貯金をすべてチャリティに寄付し、
身元を証明するもの、現金まですべて焼き捨て、
アラスカの荒野を目指し、ヒッチハイクします。

彼は、自然の中に自分をとけ込ませたい、
本当の自分を見つけたい?
人間の本質にかえりたい?

この青年は、心の中に、何かとても純粋な物を強く持っていたようです。
だから、自分の身元がわかる物をすべて捨て、
過去の自分と決別し,まっさらの状態になったのでしょう。

翌年、1992年4月、
クリス・マッケンダラスは、
ついにアラスカにたどり着き、
荒野の中に放置されたバスの中で、
一人、暮らし始めます。

ところが、来る時にはせせらぎだった川が、雪解けで大氾濫。
元来た道を戻れなくなり、荒野に閉じ込められ、
バスの中で餓死。

都会での暮らしに慣れた彼は、
持っていた猟銃もサバイバルするためには不十分なもので、
十分な食料を得る事ができませんでした。
さらに、野生の植物を食べ、
あたってしまったようです。






家族も、過去もかなぐり捨てて飛び出した彼ですが、
最後のバスの中では、
きちんと実名でサインした遺書等を残しています。
このサインのおかげで、遺体が発見された後、すぐに身元がわかったのです。

最後の最後になって、自分の過去、家族
自分自身の人生を、肯定的に受け止める事ができたのでしょう。
そして、それを心から愛おしい物と思う事ができたのでしょう。

もし、ここで本当に自然の中で一人ぽっち、
とけ込んで消えていきたいと思ったならば、
実名は残さなかった事でしょうから。

ただ、とても哀しいのは、
彼が自分の人生を肯定的に受け止める事ができた時に、
元いた所に生きて帰る事ができなかった事。
それは、死というギリギリの所まで
追いつめられなければ、わからなかったのかもしれないけれど。。。

彼の最後のメッセージの日付けは1992年8月。
ハンターによって、遺体が発見されたのは、それから1か月後の9月。
亡くなった時の年齢は、24歳でした。
たしか、そのバスは今も
同じ所にあると記憶しています。

この若い青年の死は、アメリカ中のニュースとなりました。
上記のように、ノンフィクションの本が書かれ、
映画も作られました。
ギターをつまびくボーカルのBGMが印象的です。




映画の中で、主人公が、
「頭でっかちになるな」と言われている所があります。
確かに、彼は、とても頭がよすぎ、純粋すぎたのかもしれません。

もし、彼が、何ごともなく、あのまま旅を続けていたとしたら、
今ごろ、どんな人生を送っていたんだろう、
どんな人になっていたんだろうかと思います。
人は生きている間に、経験を通して、
知らず知らずのうちに変わっていきます。

マッケンダラスのような純粋さは、
若さゆえの真っすぐさがあります。

それは、多分、私たちの多くが、人生行路の間に
いつのまにか置き忘れて来てしまっているようなもの。
そこが、多くの人がマッケンダラスの短い人生に惹かれる理由なのでしょう。

何だか、見えない力というのか、
運命のような物が、彼のピュアな精神を、
その死によって、永遠に保存したーー
という考えが、頭から拭い去れません。

下は、クリス・マッケンダラスのメモリアルとして作られた公式サイトのリンクです。
写真、映画、本のことなど、彼について、沢山の事がわかります。

クリス・マッケンダラス公式サイト(英語)

参考リンク(英語)




荒野へ(日本語)




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