5/15/2013

ニュースの拾い読み <アンジェリーナ・ジョリーが選択した がんの「予防的」摘出手術>





News Article (English)

遺伝子の研究は、短い間に急速に発達しました。
5年ほど前くらいまで、1人の人のDNAの配列を調べあげてしまうのに、
10年間かかると言われていましたが、
今では1週間程度です。
調べるのにかかる経費は、現時点で、日本円でいうと大体、20万円から30万円。
この金額は、1人の人間のDNA情報を「すべて」調べ上げる、ということですから、
たとえば、遺伝的な要素が高いとされている
「乳がん」などの病気について、
その発症のリスクを調べたいという事でーーとなると、
決まったごく一部の部分のDNAを調べればよいので、
もっと安い経費で、もっと早く調べる事ができるようになりました。

アメリカでは、乳がんの発症率が高いです。
アジア人の発症率は低めですが、
いわゆる白人女性の発症率は、驚くべき高さです。
(8人に1人くらいが乳がんにかかると言われています)

アメリカに来たばかりの頃、つまり、20年前に読んだ「タイム」だったか、
「ニューズウィーク」の記事ですが、
祖母、毋、娘の3世代が、すべて乳がんになり、
しかも、ほぼ同じ年齢で発症したという例が大きく紹介されており、
「宿命」を背負っているかのようで、
当事者の恐怖といったら、はかり知れないものがあると思ったものです。

さて、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、
乳がん(breast cancer) の発症率がかなり高いという事で、
発症する前に乳房を摘出してしまうという、
予防的摘出手術 (preventatiive double mastectomy)を受けたと、発表しました。

彼女の母親は50代で、乳がんで亡くなっており、
乳がんを発症するリスク(DNA検査)を調べた所、87%あまりだったようです。

予防的摘出手術とは、あらかじめかかる可能性が高いがんがわかっている場合、
がんが発症する場所を、かかる前に取ってしまうことです。
乳房の摘出手術、人工的な乳房をつくる手術、
この2つをしたことになります。

これらの手術をくぐり抜ける間、
婚約者のブラッド・ピットが、いつもそばで彼女を励まし続けていました。

手術後、がんの発症率を調べ直したところ、5%程度まで落ちたようです。

もう1つ、この予防的手術の対象として出てきていたのが、
卵巣がん(ovarian cancer)ですが、
こちらの方は、早期発見が難しく、かかったらかなりやっかいです。
彼女としては、両方気になり、調べたようですが、リスクの値は50%。
発症率が高く出た乳がんの方の予防的手術に踏み切ったようです。

ちなみに、卵巣がんの「予防的摘出手術」は、
まず、女性として大切な出産を終えた後で、
40才になる前に行うのがよいと言われています。
彼女は今、30代後半。
今後また、こちらも、という決断をするかもしれません。


これからの時代、
医療もこういった「カスタムメイド」の
「予防的治療」がさかんになっていくのかもしれません。
特に、ここアメリカでは。

発症していないうちの処置なわけですから、医療保険はきかないはずです。
アメリカの医療費は高く、
かなり費用がかかることと思います。

私がジョリーだったら、どうしただろう?
悪い事が起こる可能性がかなり高い事をわかっていながら生活するのは苦しいです。

ジョリーが今回、彼女のこのとても個人的な選択を世間に公表したのは、
多くの同じような人たちに、
この新しい医療の選択の可能性を知ってもらいたかったから。

みなさんだったら、どうしますか?

ところで、日本の医療は別のルールで動いています。
日本では、この「予防的摘出手術」は、どう扱われていくのでしょうね。

***参考資料***
アンジェリーナ・ジョリー

Angelina Jolie Reveals She Had Preventative Double Mastectomy


Breast Cancer Risk について、治療のオプションについて知るサイト(米国/英語)

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