5/26/2013

お気に入りの映画 <バベットの晩餐会>

映画「バベットの晩餐会」

Babette's Feast (DVD/English Caption)

Babette's Feast (books)




ひさびさに、お気に入りの映画の投稿です。
今回の映画は「バベットの晩餐会」
1987年のデンマーク映画です。
ひところ、この映画に出ていた料理を出すのが、
あちこちのホテルやフランス料理店で流行ったように思います。

バベットの晩餐会メニュー(例)

トレイラー(英語) 



以下、簡単な「あらすじ」を書きました。

19世紀後半、デンマークの辺境の小さな漁村に住む、
ある厳格なプロテスタント牧師の美しい娘姉妹は、
それぞれ、若き士官、著名なオペラ歌手からの求愛を振り切り、
父親の仕事を生涯手伝っていく決心をします。

歳月がたち、父親が亡くなった後も未婚のままその仕事を献身的に続けていました。
ある嵐の夜、姉妹のもとに、
パリで大歌手となった、元求愛者のパパンからの紹介状を持った
バベットという女性が訪ねて来ました。
パリ・コミューンで家族を失い亡命してきたバベットは、無給でよいから働かせてほしいという申し出をします。
そこで、姉妹はバベットを家政婦としておくことにしました。

姉妹は、毎日貧しい人々、お年寄りたちに簡単な食事(主にスープ)を届けています。
バベットがこの食事をつくり始めると、
たちまち人々の「食べっぷり」が変わり、目が輝き出します。
貧しい村の、貧しい食材。
でも、バベットにかかると、それが「何か特別な料理」に変わるのです。

バベットは、自分の過去を語らず、いつも謎に包まれた人物です。
でも、一家になくてはならない一員となっていきます。
バベットの祖国フランスとのつながりは、パリの友人に買ってもらっている宝くじのみ。
何が目的なのか、もちろん彼女は語りません。淡々と、宝くじを買い続けます。

それから14年の月日が流れました。
善意が何よりも大切な、質素な村の暮らし
ーーー名も無く、貧しく、美しくーーーのはずでした。
ところが、父親の死後、弟子だった人々も老いとともに、
我が身の不幸を恨んだり、嫉妬したり、
といった感情が先にたつようになり、いさかいばかりが増えてきます。
心を痛めた姉妹は、父親の生誕百周年の晩餐を行うことで
皆の心を一つにしようと思いつきます。

そんなおり、バベットの宝くじが1万フラン当たりました。
そこで、バベットは晩餐会でフランス料理を作らせてほしいと姉妹に頼みます。

さあ、ここからが圧巻。
どしどし届く食材、高級なワイン。
あざやかな手さばきで調理される料理の数々。

晩餐会の夜、かつての姉妹への求愛者たちも席を連ねます。
あまりの贅沢さに息を飲む村人たち。
一口、またひとくちと、バベットの料理は次第に村人たちの心を解きほぐしていきます。
そして、自然に笑顔をかわし、手と手を取り合い、
遠く昔に忘れてきた、温かい心の輪を取り戻します。

姉妹の元求愛者たち(将軍と大歌手)は
フランスでバベットの料理を食べた事がありました。
こと紹介者である大歌手パパンは、バベットと近しい間柄です

そこで、バベットの過去が、ついに明らかになります。
実はバベットは、コミューン以前「カフェ・アングレ」の女性シェフでした。
超一流レストランの有名シェフだったのです。
バベットは、消えてしまう宿命の芸術「料理」の達人。
そこには、熱いアーティスト魂があります。

晩餐の後、姉妹は、バベットが1万フランを全部使い果たした事を知り、愕然とします。
元のもくあみの文無しです。
でも、バベットは胸を張って答えます。
「芸術家は決して貧しくなることはない」と。
バベットは、自分がベストを尽くした料理をつくったとき、
その料理で人を幸せにすることができる、と評され、自負もしています。
そして、全財産を使い果たし、
かつての仕事でのレベルの食材で料理をつくったことは、
そんな自分自身のためでもありでした。

バベットは、引き続き姉妹のもとにとどまります。
貧しいけれど、バベットのつくる質素だけれど、本物の味が理解できる
素朴な村人たちと暮らしていく事に迷いはないのでした。

*****

私は、この映画を最初、日本語字幕つきで観ていました。
そして、アメリカで生活するようになってから、再度英語字幕つきで観たところ、
英語字幕の方が、なぜか感動を誘いました。
最後の大詰めのところ、英語の字幕の方が、
はっきりとバベットの心意気が伝わってきたのです。
これは翻訳の善し悪しというより、言語の性質の違いだと思います。
そんな事もあって、とても印象深い映画です。

*****


原作者は、デンマークの作家カーレン・ブリクセン(Karen Blixen)。
 英語でも並行して作品を書き、
イサク(アイザック)・ディーネセン(Isak Dienesen
という男性名で、発表していた作家です。 

1913年に父方の親戚のスウェーデン貴族のブロア・ブリクセンと結婚し、 
翌年ケニアに移住し、夫婦でコーヒー農園を経営しました。 
ところが、梅毒を移され、結婚生活は破綻。離婚。 
コーヒー農園経営を1人で続けようと試みますがあえなく失敗し、 
1931年にデンマークに帰国しました。 
うつされた梅毒は、彼女の生涯の病気となりました。






2つの名前を持つ作家
カーレン・ブリクセン(Karen Blixen)。
またの名をイサク(アイザック)・ディーネセンIsak Dienesen



彼女はデンマークの国民的作家なので、お札にも肖像が印刷されました。


アフリカでの生活を描いた自伝「アフリカの日々」(Out of Africa)も、
本になっており、映画化もされています。
邦題「愛と悲しみの果て」(1985年・USA)
(メリル・ストリープ主演)
トレイラー

ビデオ
http://youtu.be/CKlA15b0Unc











ところで、この作家(ブリクセン/ディーネセン)ですが、
デンマーク語と、英語と並行して作品を書いて出版していた関係で、
デンマーク語版と、英語版の作品の間に微妙なずれが生じていることもあり、
そこも、この作家の面白さの一つ。

ですから、この「バベットの晩餐会」も、
デンマークで出版されたバージョンと、
英語で出版したバージョンの作品の内容に、
若干の違いがあるようです。

たとえば、「バベットの晩餐会」も、邦訳がいくつか出ています。
原本がどのバージョンなのか、記憶が確かではないですが。
下は一番出回っているもの。






私が他に読んでみたい本が1冊あります。
「不滅の物語」



発表した作品集。表題作を含む7つの不思議な寓話が収録されています。

不滅の物語
 満月の夜
 指輪
 カーネーションを胸に挿す若い男
 悲しみの畑
 エコー
 女人像柱 -未完成ゴシック物語




英語のバージョンの方が予算的には安い。
日本語で読みたいけど、高いからな〜。。。ふう。。(慢性的な悩み)

***おまけ***

日本語字幕付きビデオ(下のリンクから入れます)

ラストシーン(英語字幕)


******資料******
カレン・ブリクセン公式情報サイト(英語)
http://www.karenblixen.com/
最後のインタビュー(スエーデン語)=私には分からない=残念
http://www.youtube.com/watch?v=eO0WhkQZhkU

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