4/22/2014

ステイトシアターで映画鑑賞 <”新しい“白黒映画「ネブラスカ」 Nebraska >

若い頃ーーーそれはそれは大昔
日本にいて、子供もまだなかった遠い遠い昔、
私はか〜なり沢山映画を観ていました。
3本だての名画座をはしごし、
貸しビデオ屋さんの常連。
日本ではあらゆる国の名画が豊富に紹介されていますから、
本当にいいなと思います。
アメリカに住むようになってみると、
ハリウッドがあるアメリカだけに、日本ほど気軽に豊富に観られません。
アメリカに来た当初は英語がよくわかりませんでしたから、
何が起こっているのかわからず苦しかったものです。

いつしか映画を観て楽しめるようになったのですが、
子供がいると意外にかつての自分のように
自分本位で観に行ける時間がなかなか作れません。
さあ映画観に行くぞ〜、という時は必ずといっていいくらい子供つきです。
ですから子供向け映画を沢山観るはめになっています。

映像技術が発達したので、
このごろのアニメは実写に近いくらいキャラクターの動きが巧みです。
出始めの頃は「おお!」と思ったのですが、
このごろはどれも似通って見えてきてしまいます。
質が悪いというわけではないですが、
要するにいろいろな物が観たい、
子供が退屈する文芸作品も観たいってことです。
State Theater
Downtown Ann Arbor, Michigan
http://www.michtheater.org/state/

さて、先月、
ちょっと中途半端な時間がアナーバーのダウンタウンでできました。

私ひとり!

早速、目の前にあるステイトシアターに入りました。
何でも良かったんです。
子供が観たがらない映画だったら。

ステイトシアターは、ミシガンシアターと同様、古い建物を保存しています。
でも、こちらはもっと大衆的な感じです。

さて、どんな映画をやっていたかというと
「ネブラスカ(Nebraska)」
例によって予習を全くしていません。
なるべく遠ざかるようにして、全く無垢の状態から観られるようにしたい人です。
映画に詳しい人は監督、俳優さん、映画界の裏話などに通じていますが、
私はあまり関心がない方で実に不勉強です。
こうやってブログに書くとき、後でフウフウ言いながらちょっとお勉強---
てな感じです。

さて、
チケットを買うと、ポンと席について映画を見始めました。
ステイトシアターのその映写室は小さいけれど、
座席の部分の勾配がけっこう急で、
真っすぐ前を見る感じで映画が観られました。
結構快適でしたが、難点は映写室の外の雑音が聞こえて来る事。
別の映写室の音なのか何なのかわかりませんが、
ミュージカルか何かやっているような音がうっすら。。。
ま、いっか。

まずこの映画が目新しかったのは、白黒映画だったということです。
一瞬、古い映画のリバイバルかと思ってしまいました。
でも、よく見ると映像の中の世界は現代のアメリカです。

今、絵ではチャコールを使って白黒でよく描いています。
そのせいもあってか、この白黒の世界の美しさを大いに堪能しました。



http://en.wikipedia.org/wiki/Nebraska_(film)


映画の場面は日本の人たちからすると全く歯牙にもかからない地味な土地ばかり。
私は今、田舎町で暮らしていますから、
映画の中の風景は、あ、うちの周りとそっくりという感じです。
このアメリカの風景に郷愁みたいな物も少し感じるようになったりして。

さて、ストーリーですが、簡単に説明します。

モンタナ州に住む老人ウディは、大酒飲みで頑固者のへそ曲がり。
家族の中では情けない立場にいます。
そんなウディの元に、100万ドルが当たりましたという手紙が届きます。
この手紙がくせ者で、私もアメリカに来て間もない頃、
同じような手紙を沢山受け取った事があり、
一体何なのかよくわからず悩みました。
でも、よく読むと小さな字で、

「この手紙についている番号が当選番号と一致すれば(当選)」

と書いてあるのです。

よく読めば、当たったなどとは思わないのですが、
ウディは当選したと思い込み、
ネブラスカのリンカーンという町にある会社まで
お金を受け取りに行くつもりになります。

歩いてでも行こうとするウディ。

息子のデイビットは、母親からけたたましく言われ、
折り合いが悪く距離を置いていた父親を半ば無理矢理車に乗せ
ネブラスカに向けてドライブします。


ネブラスカはウディ夫婦の故郷でもあり、
リンカーンに行く途中、親戚の家に立ち寄り、久しぶりに一族皆で揃う事にします。
バスに乗って別途故郷に向かう母親、
テレビの(花形ではない)アナウンサーのデイビットの兄も後で合流。

叔父、叔母、ちょっと不思議なムードのいとこたち。

ちょうど私が住んでいる町のように、
ダウンタウンはそれこそ交差点一つのあたりにちょっとお店が集まっただけの、
小さな小さな田舎町。

デイビットは、そこで、父・ウディの若き頃を知る人々に出会っていきます。
飲んだくれ、つむじ曲がりの老人の過去には、
繊細で信じやすかった若者の姿が見え隠れします。
また、強烈な性格の母親と結婚する前、ウディとつきあっていた女性にも。
彼女と母親は大いに性格が違い、おっとり落ち着いたたたずまい。

ウディは100万ドルが当たったと信じ込んだわけですが、
「信じたかった」という切ない気持ちがあったのかもしれません。

貧しく、情けない人生の自分。
そんな自分が子供たちに何か残してあげたかったという事。

父親を受け入れられなかったデイビットですが、
温かい気持ちを持てるようになります。


***

アメリカは広く、まだまだ沢山、外国人が住んでいない所があります。

この映画に出て来る世界も同様で、すべてオールアメリカン。
私のようなアジア人がポンと入ると、ちょっと浮いてしまいます。

でも、アメリカに長く住み、

人種を問わず友人知人ができてきてみると、
だんだん自分と違う部分より、共通する部分を感じるようになりました。

こういうオールアメリカンの田舎町の世界にも郷愁を感じます。
人間が寄り集まって住んでいるのです。
ふるまいや考え方など、共通する所がたくさんあります。
また、親子の関係、家族の想いというのは言葉や文化が違っていても、
共通点が多く、共感できる部分が沢山あります。

日本の小津安二郎の映画が世界中で愛され、評価され続けていますが、
これも同じ理由からですね。

******

ところで、この映画でデイビットの母親役をした女優さんJune Squibbですが、
映画の中で、下世話な話をけたたましい声で赤裸裸に連発する所がすごいです。
この映画で初めて賞をもらいましたが、84才!
長年、端役続きの女優さんでしたが、このネブラスカで注目され受賞しました。
(下の授賞式での写真は映画の中の姿とそのまま同じ/左から2番目)

http://www.pinterest.com/pin/276971445807731410/
この映画、配給会社のリクエストをことごとく無視して
白黒映画にしたり、地味に仕立てたとあります。
キャストも、配給会社の希望の顔ぶれではなく、
監督がふさわしいと思った俳優さんたちを選んでいます。

そんなこんなで、
今、このアメリカには珍しい渋い良質の文芸映画ができました。

そういう意味で、この映画が評価されて数々の賞を取ったのは、
アメリカでも地味な文芸作をもっと観たいと思う私にとって、
とても嬉しかったです。

今後にも期待しよう〜!



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